今回は総合研究大学院大学の高エネルギー加速器研究機構(通称:KEK)と呼ばれる研究機関について、どんな施設でどうのように院試対策を行えば良いのかを解説していきます!
待って、総研大?KEK?
何それ美味しいの??
初めて聞いたんだけど、、。
そんな君でも大丈夫!
KEKは、エネルギー分野で日本でもトップクラスのレベルを誇る研究機関なんだ!
今回はこれらについてもしっかりと解説していきます!
それではいきましょう!
総研大 高エネルギー加速器研究機構ってどんなところ?
まずは総研大の高エネルギー加速器研究機構がどんなところなのかについて解説していきます!
高エネルギー加速器研究機構は名前がとても長いため、高エネ研やKEKと言われています。ここで余談ですが、KEKとは英語の頭文字とかではなく、高エネルギー加速器研究機構」をローマ字した時の頭文字になっています。
ちなみに、英語では「high Energy Accelerator Research Organization」といいます。
KEKではどんな研究を行っているの?
ここからは、高エネルギー加速器研究機構で行われている研究についてお話します。
高エネルギー加速器研究機構では、加速器を使った研究が行われています。
加速器とは、陽子や電子を光速の99%まで加速して陽子や電子を衝突させる装置の事を言います。
つまり、高エネルギー加速器研究機構ではこのような研究が盛んにおこなわれているということなのです!
ここで少し話はそれますが、物理学には理論と実験の2つがあり今述べた加速器の研究は実験の研究に当たります。すなわち、加速器実験を行っているということになるのです。
加速器実験は主に、素粒子や原子核について研究をする際に用います。ですので、今までに書いたことを再度いうならば、「高エネルギー加速器研究機構は加速器実験を通して、素粒子や原子核の研究を行っている」ということになります。
これを聞いて、理論や宇宙についての研究は行っていないと思う人がいると思います。その点について、次に説明します。
KEKは理論研究と宇宙の研究も行っている!
ここでは、タイトルにもあるように高エネルギー加速器研究機構で行われている宇宙の研究と理論の研究についてお話します。
少し踏み込んだお話ですので、詳しくは大学見学などで実際に先生や院生にお尋ねしてみるのがオススメです!
理論研究について
まず、理論研究についてお話します。
高エネルギー加速器研究機構では、先程述べた「加速器実験の研究」だけでなく理論研究も行っています。
具体的には、高エネルギー加速器研究機構内にある「理論センター」というところで理論研究を行っているのです。
どのような理論研究を行っているかというと、素粒子物理学・原子核物理学・宇宙物理学の理論の研究を行っています。素粒子物理学や原子核物理学の理論は、どこの大学院でも高エネルギー加速器研究機構と同じような研究を行っていると思いますが、高エネルギー加速器研究機構の宇宙物理理論は他と異なります。
高エネルギー加速器研究機構で行われている宇宙物理理論の研究は素粒子・原子核・重力に関する基礎理論に基づいて、研究が行われています。
これだけだとわからないと思うのでもう少し詳しく言うと、KEKで行われている宇宙物理理論は「インフレーション理論・初期宇宙」などの素粒子や原子核がかかわる時期についての研究を行っているということになります。そのため、マクロな銀河などは行っていないということです。
宇宙理論についてもっと深掘り
ただし、ブラックホールは扱っているので理論センターでは
「インフレーション、初期宇宙、ブラックホールなどの高エネルギー天体」
これらの理論研究を行っていると思っていただくのが良いでしょう!
ここまでで理論研究も行っていることが分かったと思いますが、それだけでなく宇宙の研究も行っているということも分かったと思います。
しかし、宇宙に関する内容を極めたい方にとっては、「宇宙の実験は行ってないの?」と思う人もいると思います。
この点については、次からお話していきます。
KEKは宇宙の『実験』もやっている!
ここからは、KEKで行われている宇宙の『実験』について話していきます。
KEKでは、宇宙の理論研究だけではなく宇宙の実験も行っています。
先程、宇宙理論は初期宇宙やインフレーションを扱っているということを話しましたが、宇宙の実験で扱っているのは「宇宙マイクロ波背景放射」というものです。
これについて少し説明すると、宇宙マイクロ波背景放射とは宇宙が誕生してから38万年たったころに宇宙が高温から低温まで冷えてきて、それによりプラズマ状態であった原子が再結合して分子になることで光が直進できるようになったときの名残のものです。
この宇宙マイクロ波背景放射を用いて、宇宙マイクロ波背景放射より前の世界を実験的に調べたいということを宇宙実験では行われています。
具体的なことを言えば、宇宙物理実験は「宇宙マイクロ波背景放射の偏光観測から原始重力波の痕跡を探す」という研究テーマで研究を行っています。そのため、宇宙物理の実験についても扱われているというわけです。
どうやってKEKに入るの?
ここまで読んできて、とても魅力的だから入りたいと思う人がいるかもしれません。
でも大丈夫!大学共同利用機関法人だから無理なんじゃと思うかもしれないですが心配はありません。
KEKに入る方法は、総合研究大学院大学高エネルギー科学研究科素粒子原子核専攻の大学院入試を受ければよいのです。
この、総研大の素粒子原子核専攻はKEK内にあるのでKEKの装置やKEKに所属するスタッフから指導を受けられたり、最先端の研究を行うことができます。そのようにしてKEKに入ります。
コラム:総研大は博士まで行かないと卒業できないって本当?
みなさん、総研大にはこのような噂があることをご存知でしょうか?
総研大って博士課程まで行かないと卒業できないって噂、本当なの?
修士課程では卒業できないの??
実は総研大の素粒子原子核専攻を受験する際には「5年一貫制」という制度であるため博士課程までエレベーター式に行くことができます。
一方で、この5年一貫制がきっかけで「総研大に進んだら5年間必ず大学院に残らないといけない」と考えてしまう人がいますが、これは大きな誤解です!
高エネルギー加速器科学研究科では、在学中に修士学位を取得すること事態はできないのですが、なんと所定の単位を取得した上で「修士学位取得資格者認定」を受けられるため、退学時に修士学位を取得することができます!
中には修士二年で総研大をやめて就職するという人もいますので、あまり心配はいらないかと思います◎
KEKでの修士号の取得に関する詳細な情報は、大学公式のこちらに記載されていますので是非併せてご覧ください!
総研大高エネルギー加速器科学研究科の試験科目大公開!
ここからは、総研大高エネルギー加速器科学研究科の入試科目を大公開します!
総研大高エネルギー加速器科学研究科の修士課程入試は
- 筆記試験
- 面接試験
の2つを受験する必要があります!
筆記試験は、数学・英語・専門科目の3つに分かれています。
ここまで読んできた人は、「総研大高エネルギー加速器科学研究科ってKEKだからすごく筆記が難しいと思うからそのための勉強が必要なんじゃないの」と思うかもしれません。
総研大高エネルギー加速器科学研究科は東大や東工大とは異なり、KEKのもとに置かれているので、そう思うのも当然かと思います。しかし安心してください。
総研大高エネルギー加速器科学研究科の筆記試験の専門科目は、他の東大物理学専攻のように力学~量子力学までの基礎的な物理が出題されるので通常の筆記試験対策で解くことができます!
また、数学については難問奇問が出題されるわけではなく線形代数や微分方程式のような基礎的な計算問題が出題されるので、学部で学んだ数学を復習するという院試対策で十分となります。
筆記試験の出題される分野をとことん解剖!
ここからは、総研大高エネルギー加速器科学研究科の筆記試験で出題される分野を、解剖していきます!
総研大高エネルギー加速器科学研究科の筆記試験過去問は過去16年分公開されています。
しかし、16年前と今の試験を比べると形式や出題されない分野などがあるためあまり古い過去問の分野は解剖しません。
一方、7年前から5年前の過去問は専攻ごとに異なっているのでこれも解剖しません。
解剖するのは、4年前の過去問から現在までのものです。この4年分の過去問は、専攻共通の問題であるため現在の試験形式と同じためです。
また、ここでは今回作成してくれた合格者くんが実際に使用していた参考を全て公開しています!!
ここに掲載されている参考書は全て使用していたものです!
それでは、解剖していきましょう!!先ずは数学から♫
数学
総研大高エネルギー加速器科学研究科の数学の試験は、基礎的な内容が出題されます。具体的には、線形代数・微分方程式・フーリエ解析・ベクトル解析・微分積分学・複素関数
です。この先では、それぞれの分野でどの項目、単元がよく出題されているかというのを詳しく見ていきます
線形代数
線形代数は毎年必ず出題されています。
よく出題されている分野・単元は、行列同士の掛け算、固有値固有ベクトルを求める問題です。
令和に入ってからの試験問題の線形代数は、固有値固有ベクトルを求める問題しか出題されていません!
微分方程式
微分方程式も、必ず毎年出題されています。
よく出題されている分野は、定数係数線形微分方程式という分野です。
この分野の微分方程式を誘導に乗っていきながら解き進めるという形式になっています。
フーリエ解析
フーリエ解析はここ2年ほど、出題されていません(令和元年入試、令和3年入試)。
しかし、それ以前の年では毎年出題されていました。
よく出題されている分野は、フーリエ解析の中でもフーリエ変換のみが出題されています。
また、出題されているフーリエ変換の分野は、教科書に載っているような問題やグリーン関数を用いたフーリエ変換の問題が出題されています。
ベクトル解析
ベクトル解析は、近年はあまり出題されていませんが過去には毎年出題されていました。
出題された年のベクトル解析の分野は、必ず線積分・面積分の分野でした。
また、それを求めるための勾配・回転などの計算方法も同時に出題されていたという年があります。
微分積分学
微分積分学は、令和になってからの試験で毎年出題されるようになりました。
出題される分野は、必ず二重積分となっています。
特に重積分の中でも「ガウス積分」と呼ばれる積分が出題されており、出題されたガウス積分の答えがなぜそうなるかという証明に重積分を用いるという形式になっています。
複素関数
複素関数は、令和になってからの試験で毎年出題されるようになりました。出題される分野は、必ず複素積分となっています。そのため、複素積分を完璧に理解する必要があります。
英語
総研大の高エネルギー加速器科学研究科の英語の試験は、TOEICとかではなく独自試験が課されます。そのため、独自試験を受ける必要があります。これを読んだ人は、独自試験はどのような形で出題されるのかといったことが知りたいと思うので、過去4年分のものを書いていこうと思います!
その前に…
総研大高エネルギー加速器科学研究科の英語の試験は、長文読解となっています!また、長文読解の内容も高エネルギー加速器科学研究科のあるKEK色で染められているなあという印象です!
これから、その具体的な内容について踏み込んでいきます!
総研大高エネルギー加速器科学研究科の英語は、大学で学ぶ単語では対処できない!
総研大高エネルギー加速器科学研究科の英語は、このタイトルにあるように大学で学ぶ単語では対処できません!
その理由として先に述べた英語の長文読解、内容が「宇宙に関する文章・加速器に関する文章・素粒子原子核に関する文章・素粒子物理学に関する文章」などを読む必要があるからです!
これらの分野に対する専門の英語を知らなければ、読んでも意味が分からないということに陥ってしまうからです。
そんなこと言っても、専門の英単語というけれど知っている単語とかあるよ、と思っている人もいるかもしれません。
そこでですが、例えば「energy」。これは、「エネルギー」なので誰でも知っていますよね。しかし、「mean」。これはどうでしょう。「mean」=「意味」と覚えている人がほとんどかと思いますが、これは専門の英語になると、「平均」という意味になります。
つまり、このような知っている単語だけれど、専門の英語になると意味が変わるものがあるのです。
そのため先ほど、専門の英語を知らないと読んでも意味が分からないということを書いたのです。
また、総研大高エネルギー加速器科学研究科の英語は、英訳を和訳にするという問題が出題されます。そのため、これらのことがわかっていないと和訳ができない・和訳するときに変な意味を使ってしまい日本語がおかしくなる、というようなことが起こります。
また、専門の英語を知らないともう一つ陥る点があります。これは、和訳を英訳にするという作業です。これは、日本語で書かれたものを英語にするという問題が出題されるので、専門の英語を知らないと英訳をすることができなくなり、問題が解けないという悪循環に陥ります。これでは、いくら、数学と専門科目ができたとしても、合格するのは厳しくなってしまいます。
また、専門の英語がわからないと悪循環に陥ることについて書いてきましたが、中には「長文読解ということだし、語句注が書いてあるんでしょ。」と思う人もいるかもしれません。過去問を見てもらえれば分かりますが、語句注は確かに書いてあります。
しかし、散乱・系統誤差などのわからないであろうと推測されるもののみしか語句注は書いてありません。そのため、和訳する文に語句注がない可能性が高いため語句注があるから平気とかいう安易な考えは捨てる必要があります。
ここまで、いろいろと書いてきましたが出題される分野は
- 長文読解
- 短文英訳
- 電子メールを英語で作成する英作文
の3種類です。
電子メールを英語で作成する英作文はほぼ毎年出題されています。長文読解は必ず毎年出題されているという傾向があります。
最後に専門科目について書いていきます!
専門科目
総研大高エネルギー加速器科学研究科の筆記試験は、数学・英語・専門科目の3つを受験しなくてはいけません。そのため、最後に専門科目について書いていきます。
総研大高エネルギー加速器科学研究科の専門科目はある意味自由になっている!
これを読んで、びっくりした人が多いと思います。専門科目、自由??とよくわからんとなっていると思うので詳しく書いていきます。
総研大高エネルギー加速器科学研究科の専門科目は、6問出題されそのうち4問を選択して解答する形式となっています。そのため自由と書いたわけです。具体的には1-4問目までは力学~量子力学までの基礎物理学の理論となっており、5問、6問目は実験の問題となっています。
つまり、この6問の中から4問選択してねということなのです。中には「4問選択と言っても何が出るか分からない、最初から4問連続でやるしかない」というようなことが聞こえてきそうですが、その点は安心してください。4問選択は変わらないですが、問題を見てから4問選択ができるからです。これはとてもありがたいと個人的には思っています。
つまり、何が言いたいかというと、問題を見てから「今年は苦手なやつが出てるからこれは捨てようかな」ということができるということです。
言い換えれば、自分の得意な分野でのみ勝負ができるということになるのです。
これはとてもいいと思いませんか??
なぜなら、先に述べた英語のみしっかり対策しておけば数学と専門科目で高得点が取れるという可能性があるからです。
つまり、英語だけしっかり対策をしておけば合格に近づけることができるということです。
これは朗報ですよね!
しかし、過去問演習ほど大事なものはないのでしっかりと過去問演習を行う必要があります。
4問選択と言いつつも注意が必要です。総研大高エネルギー加速器科学研究科の実験部門のみを志望する場合は、今述べたように4問を自由に自分の得意科目なども考えて選んでいいのですが、素粒子原子核専攻の理論部門を志望する場合は必ず第1問と第2問は解く必要があるのです。
つまり、素粒子原子核専攻の理論部門を志望する場合はその2問と自分で選んだ2問を解かなければいけないという制約があるので注意が必要です。
ここからは、専門科目の出題される分野・単元について書いていきます。
量子力学
総研大高エネルギー加速器科学研究科の専門科目で出題される量子力学は、通常の大学院で出題される量子力学とは少し異なっています。具体的には、量子力学と電磁気学の融合問題・球対称ポテンシャルなどを導入したシュレーディンガー方程式に関する問題などです。つまり、量子力学の発展に近い問題が出題されるというわけです。
統計力学
統計力学は、量子力学とは異なりそこまでレベルが高いものは出題されていません。しかし、いわゆる教科書にあるような簡単な分配関数を求めるというものではなく、一般的な分配関数を求めるという問題が出題されていたりします。また、物性理論で使われる統計力学の初歩の問題も出題されていたりするということが、近年の出題傾向です。
力学
力学は必ず毎年出題されています。出題される力学は、解析力学のみですので解析力学をマスターする必要があります。具体的には、ラグランジアンの計算の仕方・ハミルトニアンの計算の仕方などです。また、運動エネルギーを書き下すことやオイラーラグマスター方程式の計算の仕方もマスタ―しておく必要があります。
電磁気学
電磁気学は、年により様々な問題が出題されています。具体的には、コンデンサーの電場や電位などやキルヒホッフの法則が出題された年もあるのでこのような問題をスラスラと解けるようになる必要があります。さらには、マクスウェル方程式が与えられ、そこから波動方程式を導出するという問題も出題されたことがあるのでこれについてもマスターしておかなければいけません。入試傾向をみると、令和になってからの試験で毎年出題されているのは、波動方程式の導出などの波動方程式系になっているので、波動方程式の導出はみっちりと理解しておかなければいけなさそうです。ただ、コンデンサーの電場や電位の問題も出題される可能性があるため、電磁気学は全分野の基礎をマスターしておかなければいけません。
ここまでで理論の分野の問題傾向を書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。ここで再度書いておくと、総研大高エネルギー加速器科学研究科の専門科目は、以上の4つの理論問題と2つの実験問題で構成されており、素粒子原子核専攻の理論部門を志望する場合を除き自由に6問の中から4問を選んで解答をする形式です。総研大高エネルギー加速器科学研究科の専門科目の残り2つの実験問題については、4問ある理論問題の応用という枠組みになっているためこの記事では実験問題の傾向などは扱いません。
今回の記事のまとめ
さて、今回の記事はいかがだったでしょうか?
総研大のKEKの対策に関する内容について、詳しくまとめさせていただきました!
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